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- 地球要塞について(3)/死語
- 本日は海野十三の「地球要塞」が配信されます。この作品について解説をしてきました。今日が最後の解説です。作品が書かれた時代から、現在ではもう使わなくなった言葉がいくつかあります。こういうことは、現在の小説でも充分起こりうることでしょう。手塚治虫や星新一が、新しい版が出るたびにセリフなどを書き直したことは知られています。しかし、そのお二人とも亡くなってしまい、もう新しい版が出ても書き直されることはありません。
この作品は昭和15年に書かれています。書かれた時代はもちろん日本が第二次世界大戦に邁進していく頃です。小説の中の舞台は第三次世界大戦前夜です。つまり、第二次世界大戦は終結して……というわけですね。
戦前の作品をいくつか配信していますけれども、そんなに言葉で意味不明なものは、これまでそれほどありませんでした。ところが「地球要塞」ではつぎの二つが完全に死語。
ひとつは「第五列」。
まぁ、なんとなく文脈から意味が取れないわけでもありません。
第五列とはスパイのことです。本来は《味方であるはずの集団の中で、敵方に味方する人々の存在》のことで、スパイとはややニュアンスが異なりますけれど、この作品中での使われ方はスパイに近いでしょう。
現代でもスパイは存在します。しかし本来的な第五列は、いなくもないでしょうが、あまり云々されていないように思えます。といいますのは、全体主義すなわち軍国主義の中ではあってはならない存在と考えられる一方、現代のように思想が多様化していると、これはこれで認められるからです。犯罪でも犯さない限り、特別非難される事ではありません。
もうひとつは「ベトン」。
これはこの作品の根幹をなす部分です。この意味が分からないと、ちょっと困ります。ベトンとはコンクリートのフランス語。今はこういう呼び方はあまり聞きませんね。
いろいろと調べていると、ベトンは、日露戦争の時にロシア軍が旅順に要塞を作る時にベトンで固めたという歴史がありました。弾丸が貫通しにくいようです。1900年代初頭の事です。旅順要塞を作るのに20万樽使用したとの事です。
ですから、この作品でもベトンが使われています。けれども日露戦争時代と、この作品の時代とでは兵器の威力も異なっているように書かれていますので、ベトンで防御できるのでしょうか?
死語というのも、なかなか面白いです。その現代語は何か。そしてどうしてその語は消えてしまったのか。手塚や星のように作品が新しく出されるたびに書き換えるべきなのか。けれども、思想や体制に関連する上記「第五列」のような言葉は、なかなか簡単に書き換えることができませんよね。
- 2010年7月16日 12:39 editors | 個別ページ | トラックバック(0)
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