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小説を書いてみよう

第二十回 書き方教室(2)

第二十回 書き方教室(2)



 作家は一作の小説を書いたからといってプロとはいえません。小説を書いて生活をしていくわけですから、いつも書ける、いくつも書けるでなければプロといえません。できればどんなジャンルでも書けるくらいであって欲しいと思います。


 小説家で辻真先さんという方がいらっしゃいます。作家になる前はアニメのシナリオライターをされていました。この方は最初の「鉄腕アトム」のシナリオから、「デビルマン」、「Dr.スランプ」などまったくジャンルの違った作品でも、お願いすればなんでも書いてしまう。もう七〇歳を越えておられるはずですけど、とてもお元気です。これほどの方はなかなかいないんでしょうけど、お話ししていて、どんな依頼に対しても面白がって興味を持って、わたしたちの話を聞いているように感じられます。ご本人の中ではひょっとしたら、苦手だなと思っているジャンルもあるかもしれませんが、そうであっても進んで引き受けられて苦手を克服されたのではないか、そんな気がします。


 才能という点で話をしますと、実はそんなものは必要ありません。
というか、本人にも他人にも、才能があるか、ないか、なんてよくわからないのです。大切なことは「続けること」です。
 例えば、走るのが速い人がいます。百メートルを走らせたら、学年で一番速い。でも、校内で一番速いわけではない。こういう人と、走るのはそんなに速くないけれども長距離だったら県で一番速い人だったら、どちらに走る才能があるのか。おわかりだと思いますが、これは全然別の才能ですから比較するのがおかしいんです。でも、自分は走るのが遅いからといって、走るのをやめてたら長距離の才能があってもわかりません。もし、走ることが好きならば短距離では才能がなくても、やめなければ別の才能が見つかるかもしれないので続けるべきなんです。宝くじと違って、続けていれば何か見つかるはずです。もっとも宝くじも、買わない限り絶対に当たりませんけれど。


 話を戻しますと「新しい才能」とはどういうものか。あなたにしか書けない物語を、ずっと書き続けているられる人、そういう人が「新しい才能を持った人」だと思います。一作や二作書いただけで、自分には才能がない、向いていない、なんて思わずに二十作、三十作書いてみて下さい。
 ただ、忠告をしますと、今は物書きをしているだけで生活できるほど甘い時代ではありません。小説家としてデビューできたからといって、それで一生暮らせるかというと、かなり厳しい時代だと思います。社会全体が不況ですし、マンガやアニメ、小説などのエンタテインメント産業も不況です。


 私も、もう二十年くらい前に雑誌に小説を書いて、単行本も出しました。そうすると、たちまちいろんな出版社からいっぱい注文が来るんじゃないかと思っていました。しかし、そんなことはまったくありません。注文なんて来ないんです。せいぜい「次の作品ができたら持ってきていいよ」程度のお話です。担当編集者と次回作について何度も打ち合わせなんてこともなく、「できたら持ってきて」なんです。私は持っていきませんでした。実は、持っていかなければオシマイなんです。


 今は、わかりますけど、担当編集者といっても、その編集者一人で何人もの作家の担当をしているんです。売れっ子もいれば、ベテランもいる、そしてわたしのような新人の担当もしている。この先どうなるかわからないような新人に、そんなに時間をかけられないわけです。他に仕事がいっぱいありますから。また、一作しか書いていない新人がどんな資質を持っているかもわかりませんから、出てくる言葉は「できたら持ってきて」以外ないんですね。意欲的に、積極的に、次々と新しい作品を書いて持ってくるような新人でないと見込みがないんです。
 一作書いてデビューできたからといって、たちまちチヤホヤされるなんて幻想は捨てて下さい。デビューしたあとの方が本当の意味でのスタートで、のんびりしているとすぐに相手されなくなります。
 ですから、デビュー前の今のうちに、二十作でも三十作でも習作を書いて、ストックを作っておくべきなんです。


 それでもなかなかプロとして、物書きだけで生活していくのは難しい。理想を言えばちゃんとした仕事をしながら、作品を発表するのがベストです。可能ならば正社員で就職できた方がいいです。
 インディーズのミュージシャンをしていて「今にビッグになるんだ」と夢を語るフリーターがいます。ミュージシャンなら全く不可能ではありませんけれども、物書きでは「ビッグになる」なんて、まずありません。ましてや作家で一生生活できる人は、日本中見回してみてもごくごくわずかです。ひとつの目安として単行本や文庫が二十冊ほど出せたら、プロとしてやっていけるようです。そうでなければ、他人から見たら単にヒキコモリのニート以外の何者でもありません。


(文責・幸森軍也)


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