
第十九回 書き方教室(1)
第十九回 書き方教室(1)
二月に福岡で講演をしてきました。その時に喋ったことを三回に分けて書いていきます。
ここにいる皆さんは小説家になりたい、シナリオ作家になりたいと思って勉強されていると思います。でも、そう思うようになったきっかけは、おもしろい物語を読んだり、見たりしたからだと思います。それを感動といいます。感動といってしまうと涙を流して「ええ話や……」なんて思いがちですけど、「ONE PIECE」のルフィーを見て「こいつスゲー!」とか、「バカじゃないの!?」と思うのも感動です。
小説でも、シナリオでも、ゲームでもすべて同じですが、人が感動するのは「キャラクターと物語」に対してです。どんなに優れた物語でもキャラクターが弱いとダメですし、逆に凄いキャラクターが創れても、それを活かす物語が作れなければ感動できません。両方がうまく噛みあって、よい作品ができるのです。
皆さんは、これから新しい才能として世に出て行こうと思っているのでしょう。わたしたちオジサン世代も新しい才能を捜しています。ここで今「新しい」と「才能」という二つの言葉を使いました。
まず「新しい」とは何か、です。古いの反対語ですよね。今、世の中にある物語はすべて古いわけです。それとは違う作品が新しいということになります。
実はこれは難しい。
世の中には小説もマンガもアニメもゲームも、あふれるほどあって、それらとは全く違う新しい物語なんてあるのかと思ってしまいます。はっきりいって、なかなかありません。たいていは誰かが先にやっているんです。しかし、そこで重要になってくるのは「あなたの個性」です。あなたが生まれて今まで生きてきて体験してきたことは、他の誰も体験していない新しいことなんです。
以前聞いた話ですけど、『週刊少年ジャンプ』で「ドラゴンボール」がヒットしている時は、「ドラゴンボール」がすごく好きなんでしょうけれど、似たような物語や絵柄の投稿が多いんだそうです。「北斗の拳」がヒットしている時もやはり同じような作品の投稿が増える。編集者は「またか!?」と思うんだそうです。人まねはダメに決まっていますけど、その前に「ドラゴンボール」に似た内容や絵柄のマンガだったら、鳥山明本人に書いてもらった方が新人よりも絵はうまいし、物語も面白いに決まっています。投稿してくる人には、そういうことがなかなかわからないようです。
あなたが小説家やシナリオ作家になりたいなら、「あなたの個性」が反映された「あなたしか書けない物語」を創作しなければ新しい作品には決してなりません。逆にいえば、あなたの個性が反映された、あなたにしか書けない物語を書けば新しいんです。
こう話しますと、なんとなく新しい物語が書けるような気がしてくるかもしれません。
ところが、なかなか簡単ではないのは、そういう物語は「ひとりよがり」になりがちなんです。「私はこんな体験をした。すごいだろ!」とか「かわいそうでしょ?」とかいわれても、「それって自慢?」ってレベルなんですよ。よほどすごければ別ですけど。たとえば人類史上初めてエベレストに登った話とか、刑務所の中の話とかなら興味ありますけど、そんな人は滅多にいません。いや、刑務所に入っている人はたくさんいるんですけど、それを物語として読めるレベルで書ける人が滅多にいないのかな? それができればその人には「才能」はあるんだと思います。ただ、それでプロの作家になろうと考えているのなら、難しいと思います。なぜなら、刑務所の中での話を書き終わったら、次は何を書くんですか? となるからです。




