
第十二回 良い文章を書くには(5)
第十二回 良い文章を書くには(5)
これまで「良い文章を書くには」と題して四回講義をしてきました。最も大切なことは、自分の書いた文書を読み返すこと。すなわち推敲にあるといいました。
長すぎて意味がわからない文章も、自分で何度か書き直し、また読み直していくうちにどんどん修正箇所が見つかり、良い文章になるはずです。そのためにも推敲は最も有効な作業なのです。
前回の講義で、短い文章に修飾語を加え、次第に長くする方法。長い文章を因数分解したり、引き算をしてブレをなくしていく方法がわかったと思います。
今回は言葉の入れ替えをしてみましょう。
前回の例文を使ってみます。
地獄丸はとてつもなく大きな鳥が西から東へゆっくりと飛んでいくのに気づいた。
まず「とてつもなく大きな鳥」に注目します。「とてつもなく」は「大きな」を修飾し、「大きな」は「鳥」を修飾しています。つまり鳥の状態を表しているわけです。とすると、鳥の状態を表す「とてつもなく大きな」と同じ内容の言葉に換えてもいいはずです。
たとえば「巨大な」「ばかでかい」などが考えられます。あるいは「空をおおうような」でもいいですね。
(1)地獄丸は巨大な鳥が……
(2)地獄丸はばかでかい鳥が……
(3)地獄丸は空をおおうような鳥が……
どの表現が一番ピッタリとくるかは作者のセンスです。物語の世界観や主人公の性格によっても、どれを選ぶべきか違ってくるでしょう。
つぎに「西から東へ」をなんとかしましょう。
地獄丸が鳥に気づいた時刻にもよりますけれども、例えば夕方だったりすると「夕日を浴びて」などとも書けます。単に「天空を横切って」でもいいかもしれません。
(1')鳥が夕陽を浴びて……
(2')鳥が天空を横切って……
「ゆっくり」はどうでしょうか。いろいろと換えられそうです。「ゆったり」「のんびり」「悠長に」。視点を変えて「大きく羽ばたきながら」もアリです。
(1'')ゆったりと飛んでいく
(2'')のんびりと飛んでいく
(3'')悠長に飛んでいく
(4'')大きく羽ばたきながら飛んでいく
もっとも「大きな鳥が大きく羽ばたきながら」だと、「大きく」がカブるので不可です。
ではここで良さそうな組み合わせで、文章を再構成してみましょう。
地獄丸は空をおおうような鳥が夕陽を浴びて大きく羽ばたきながら飛んでいくのに気づいた。
ずいぶん印象が変わったと思いませんか。
このように単語単位でいろいろと言葉を入れ替えることができます。
自分のイメージや、読者に伝えたいと思う適切な表現をするためには、いくつもの言葉を用意して文章の中で置換して試してみなければなりません。
これももちろん推敲作業です。
簡単にできるのは俳句などの短い文章です。
自分で適当な俳句を考えて、単語だけでなく、語尾さえもいろいろ入れ替える訓練をすることで、文章を磨くことができるのです。
(担当:幸森軍也)




