
第十一回 良い文章を書くには(4)
第十一回 良い文章を書くには(4)
前回は短い文章を書いてみましょう、と提案しました。最も短い文章とはどんなものでしょうか。
鳥は飛ぶ。
主語と述語しかありません。英語の構文でいうとS+Vです。「鳥」と「飛ぶ」にそれぞれ修飾語をつけることで、やや長めの文章ができます。鳥は名詞ですから、名詞を修飾するのは形容詞です。飛ぶは動詞ですから、動詞を修飾するのは副詞です。
大きな鳥はゆっくりと飛ぶ。
このように核となる文章、すなわち作者のいいたいことを明確にしておいて、それぞれ修飾語をつけていけば文章はブレません。何を言っているのかわからない文章はひとつの文章の中に、いくつもいいたいことを含ませようとするから、そうなるのです。
雲ひとつなく透けるような青空をとてつもなく大きな鳥は西から東へと向かってゆっくりと羽ばたいて飛ぶ。
どうですか。文章が多少長くなっても、文意はブレていないでしょう。
今、作成した文章は「鳥は飛ぶ」との文章に足し算をして長くしました。けれども、文章にブレを感じるのは勢いに任せて書いている時だと思います。推敲していて文章にブレを感じた場合は因数分解をしたり、引き算をしたりしましょう。
雲ひとつなく透けるような青空をとてつもなく大きな鳥が西から東へと向かってゆっくりと羽ばたいて飛んでいるのを見た地獄丸は昨日までいた城下町に異変が起こったと知り自分自身の身の安全を図るためにいそいで駆けだした。
非常に長い文章です。センテンスの中にいくつもの事柄が含まれています。これをまずは因数分解してみましょう。
この文章の述語は「駆けだした」です。すると必然的に主語は「地獄丸」となります。すなわち、主たる文章構成は「地獄丸は駆けだした」となるわけです。
また「地獄丸は異変が起こったと知」ってもいます。さらに「地獄丸は鳥が飛ぶのを見」ています。つまり、主語「地獄丸」は、この文章の中で三つのことを行っているわけです。
(1)地獄丸は(鳥が飛ぶのを)見た。
(2)地獄丸は(昨日までいた)(城下町で異変が起こったと)知った。
(3)地獄丸は(身の安全を図るために)(いそいで)駆けだした。
「鳥が飛ぶ」についてはこの項の最初に足し算をして検討したので、説明を省きます。
(2)の「地獄丸が知った」部分では「異変が起こった」という文章が含まれています。(3)では「身の安全を図る」という文章が含まれています。
文章のブレが起こりやすい原因のひとつに「自動詞」と「他動詞」の混在があります。
自動詞とは、他に作用を及ぼす意味を持たない動詞のことをいい、例文では「飛ぶ」「駆ける」がそうです。
他動詞とは、ある客体に作用を及ぼす意味を持つ動詞で、目的語がないと意味が完結しない動詞をいいます。例文では「図る」「知る」がそうです。つまり「地獄丸は知る」だけでは、何を知っているのか判りません。「地獄丸は異変を知る」となって意味が通じるのです。
ひとつの文章の中にいくつもの事象が含まれ、さらに自動詞やら他動詞やらが混在していると、作者のいいたいことがどんどん変化していって、次第に読者に伝わりにくい文章になってしまうのです。
さて、(3)の文章を引き算してみましょう。
「地獄丸は自分自身の身の安全を図るためにいそいで駆けだした。」とあります。「いそいで」は「駆けだした」に係るため、これでひとかたまりと考えます。つまり「いそいで」は状態を表しているだけで、あってもなくてもいい言葉です。引きましょう。
「地獄丸は自分自身の身の安全を図るために駆けだした。」
次に「図る」に注目すると「図」ったのは「安全」です。「身の」は「安全」に係ります。「身の安全」でひとかたまり。「自分自身の」も「安全」に係っています。つまり、「自分自身の身の安全を図る」でひとかたまりとわかります。引きましょう。
「地獄丸は駆けだした。」
主語と述語だけのシンプルな文章になりました。
このように、勢いに任せて書いた長い文章も、因数分解をし、引き算をしてシンプルな文章にすることでブレを調整することができます。巧く引いたり、分解したりできない時は、どこかにブレがあるのです。
文章を書いていて変だな、と思ったらこのような方法でセルフチェックをしてみてください。
(担当:幸森軍也)




