
第一回 文章を書くときのルール
第一回 文章を書くときのルール
最近は小説がなかなか売れないといわれています。けれども一方で小説を書いてみようと考え、新人賞に投稿する人もたくさんいます。
「おもしろい話を思いついた」
「こんな物語を書きたいんだ」
頭の中にすばらしい着想を得たとき、原稿用紙に向かい(現在はワープロや携帯電話のメモ帳かもしれませんが)筆を執ってみたくなるものです。個性的な登場人物が奇想天外な世界で活躍するさまを思いつくままに書きつらねます。どんどんお話ができあがっていきます。
さあ、新人賞に応募しよう!
でも、待ってください。
その原稿は、他人に読んでもらうために書きましたか?
どんな小説の新人賞でも、小説を書くためのルールを満たしていない作品に賞を与えることはありません。
このコーナーの第一回目では、まずそのルールをお話しします。
(1)「である体」と「ですます体」。
小説を書くとき、自分の小説は「である体」にするのか、「ですます体」にするのか最初に決めなければなりません。
多くの小説は現在「である体」で書かれています。つまりこんな感じですね。
彼女は美人である。全校男子生徒のあこがれの的であった。
一方「ですます体」の作品はなかなか書くのが難しいので、あまり見かけません。作家では芥川龍之介がよく書いています。
或春の日暮です。
唐の都洛陽の西の門の下に、ぼんやり空を仰いでいる、一人の若者がありました。
若者は名を杜子春といって、元は金持の息子でしたが、今は財産を費い尽して、その日の暮しにも困る位、憐な身分になっているのです。
「杜子春」の一説です。このように、文章の語尾が「ですます」なのか「である」で終わるのかによって、作品がどちらの系統で書かれているかが決まります。この「ですます」と「である」を混じって書かないようにしましょう。
(2)書き出しは一字分下げる。
文章の書き出しは一字分下げる約束になっています。いま、この文章の冒頭も、最初の一字分に空白が空いて始まっているはずです。この一字分空いたところから、次の一字分アキまでを段落といいます。
でも、例外もあります。それは、会話文を書くときです。
会話は「カギカッコ」で表すことが多く、これ以外にも(こんなカッコ)を使うこともあります。このようなカッコを使うときは、行の最初を一字分空けない決まりになっています。
「つまり、これで喋っているって、わかるんだってさ」
と、書く場合は行の一字目から書いていくわけです。
さて、ここでクエスションです。
日本語を表現する上で、最も小さい単位は何でしょうか?
答えは文字です。「あ」も文字。「ん」も文字です。そんなの当たり前だって?
では、次の問題。
日本語を表現する上で、文字の次に小さい単位が何かわかりますか?
それは、単語です。”語”とだけいう場合もあります。すなわち、名詞や動詞、形容詞など文字のひとかたまりを表す単位が”語”です。語に助詞がついたものを「文節」。語と語、文節と文節をつないで文章ができあがっていくのです。大きくなる順に”文字”→”語”→”文節”→”句”→”段落”といいます。
(3)
文章ができあがったら、読点と句点をつけなければなりません。
読点とは「、」のこと、句点とは「。」のことです。句点のついた部分までをひとつの文章といいます。句点のつけ方はわりとわかりやすいでしょう。
意外と難しいのは読点です。
読点をつけるルールは?
実は明確なルールはありません。ただ、読者に誤解を与えるような文章にならないために、最低限必要な箇所には読点をつけるようにしましょう。
たとえば、こんな文章があります。
「ここではきものを脱いでください」
着物を脱ぐのか、履物を脱ぐのか読点がないからわかりませんね。
「ここでは、きものを脱いでください」
「ここで、はきものを脱いでください」
読点をつけることで文章の意図が間違いなく読者に伝わるようになりました。このように最低限必要な箇所以外は、あとは作者のセンスで読点をつけていいでしょう。長い文章が続いているのにあまりにも読点が少ないと大変読みにくくなって息がつまります。けれども、読点ばかり、ひとつの文章に、目立つと、ブツブツと切れて、これまた、読みづらい。適度に読点をつけるのも、技術の一つと考えてください。
(4)語の統一をする。
一編の小説を書いていくと、同じ単語が何回もでてきます。このときに、最初は漢字で書いていたのに次にでてきたときにはひらかなになって、またカタカナなどと文章によって単語の書き方が変わってはいけません。「下さい」「ください」などもそうですし、「そのとき」「その時」も場面場面で統一されにくい単語です。
ちなみに業界用語で「時」を「とき」にすることを「ヒラク(開く)」といいます。ヒラクのかヒラかないのかを決めて文章を書きましょう。
しかし、これにも例外があります。会話中と地の文では必ずしも統一する必要はありません。
「あれっ!? オレのケータイはどこだっけ?」
彼は携帯電話をどこかで落としたみたいだった。携帯電話をなくすのは世間から隔絶された感覚がする。
このような場合は統一ルールにしばられることなく、単語の表現を変えることが許されています。
とりあえず第一回目の「小説を書いてみよう」は、小説というか、文章を書く上で最も基本的なことを述べました。回を重ねるごとに、小説を書くためのいろんな話題やテクニックを紹介していく予定です。次回をお楽しみに。
(担当:幸森軍也)




